The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 19



シャルと別れた俺は家に帰ると、リビングに向かった。

「遅かったわね。どこまで走ったのよ」

母さんがテレビを見ながら聞いてくる。

なお、父さんも起きており、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。

「友達に遭遇してたから話をしてただけ」

「あ、そうなの? ご飯はどうする?」

「食べるわー」

そう答えると、母さんが立ち上がってキッチンに向かう。

「トウコは?」

想像はつくが、父さんに聞いてみる。

「寝てるんじゃないか? あいつはこんな時間に起きてこんだろ」

やっぱりね。

「ふーん、不健康な奴」

「先週までは毎日そうだったお前が言うか?」

先週?

俺は過去のことを振り返らないんだ。

大事なのは今。

そして、未来なのだ。

「父さん、ファミレスに行くから金くれ」

「は? 今から朝御飯だっていうのに何を言ってんだ?」

「違うよー。友達が勉強を見てくれるって言うからファミレスに行くの」

「あー、そういうこと……勉強?」

父さんが息子にしてはいけない疑う目で見てきた。

「勉強。したくないけど、見てくれるんだと」

「ふーん……え? 魔法学園の勉強か?」

「うん。なんか学園の子が近くにいた」

俺のストーカーじゃなかったら偶然。

絶対に違うだろうけども。

「赤羽の子か? まあ、そういうこともあるか……」

ユイカは風邪だ。

そもそも会ったこともないし。

「ユイカじゃないけど、そんな感じ。だから金くれ」

「まあ、勉強ならいいか……」

父さんが財布から千円札を取り出し、テーブルに置く。

「相手は女子だぞ。しかも、かわいい」

「……だから土曜なのに勉強するとか言い出したのか」

父さんがもう千円を置いた。

「ありがとー」

「ちゃんと勉強しろよ」

「言われんでもするわい。こちとら腕がかかってるんだ」

父さんから2000円ももらった俺は母さんが用意してくれた朝食を食べる。

そして、シャワーを浴びると、自室で外行き用の服に着替えた。

「勉強道具も持っていくか……」

カバンに教本なんかを詰め込み、用意ができると、1階に降り、リビングに顔を出す。

すると、リビングには眠そうな顔で寝ぐせのひどい双子の片割れが朝食のパンを食べていた。

「あれー? お兄ちゃん、出かけるの?」

トウコが聞いてくる。

「ああ。勉強しに行ってくる」

「あははー、つまんね」

トウコは冗談だと思ったようだ。

まあ、気持ちはわからないでもない。

俺だって、この土日は一切勉強をする気がなかったもん。

「本当なんだなー、これが。母さーん、昼飯はいらないからー」

キッチンにいる母さんに声をかける。

「はいはい」

「じゃあ、行ってくるわ」

俺は家を出ると、シャルが指定したファミレスに向かう。

約束の10時5分前に到着すると、店に入った。

「いらっしゃいませー、一名様ですか?」

店員さんが聞いてくる。

「えーっと……」

もういるかなと思い、店内を見渡してみると、すぐにシャルを見つけた。

シャルは目立つし、何より学園の制服を着ていたのでわかりやすかった。

「あれ。待ち合わせです」

シャルの方を指差す。

「どうぞー」

店員に許可を得たので店内を歩き、シャルのところに向かった。

「お待たせ。なんで制服なん?」

シャルの対面に座りながら聞く。

シャルは朝のポニテもやめてサイドテールにしており、学園で見る姿になっていた。

「勉強だからこっちの方が良いと思ってね」

「へー。俺は土日に制服を着たくないわ」

せっかくの休みなのに。

「そういう人もいるかもね。でも、こっちの世界はともかく、アストラルの町に出かける際は制服の人が多いわよ」

「そうなの? 明日、フランクとセドリックと出かけるけど、制服がいい?」

「学割が利く店もあるし、制服が好きな子も多いからね。女子は特にそう」

へー……

じゃあ、明日は制服で行くか。

「シャルの私服が見たかったなー」

「バカ。いいから勉強をするわよ。まずは基礎学ね」

シャルは笑いながらカバンから教本を取り出した。

「さすがにカバンか」

アストラルだとカバンを持っている人はほとんどいない。

「人の目があるからねー。あなたも出しなさい」

「はーい……」

俺達はドリンクバーを頼み、飲み物を持ってくると、取り出した基礎学の教本を開いた。

そして、シャルの講義を受けながら勉強会をする。

「ねえ、昨日から気になってたけど、ノートは?」

シャルが聞いてくる。

「字が汚いから後でコピー」

字が綺麗そうなセドリックとノエルが狙い目。

フランクとイルメラは怪しい。

トウコはめちゃくちゃ汚いから論外。

「じゃあ、私のノートを見なさい」

シャルがそう言ってノートを見せてくれるが、ものすごい綺麗にまとめられたノートだった。

字もパソコンで打ったのかというくらいに上手かった。

「シャル、父さんからもらった金で奢ってやるからノートをコピーさせて」

「はいはい。このノートで説明するわよ」

シャルはその後もノートや教本を使って勉強を見てくれた。

教え方は上手だと思うし、丁寧で根気強いと思った。

「……わかった?」

「多分?」

「そう……基礎学よね、これ?」

シャルが自分のノートをよく見る。

「ごめん……俺、バカなんだ。小中のテストでも80点以上を取ったことない」

保健は90点くらい取ったことあるけど……

「多分、あなたが朝、私に対して抱いてたであろう感情が込み上げてくるわね……」

シャルがこめかみを抑えた。

「こいつ、センスねーなー」

「それ」

やっぱりか……

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