The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 26



翌日の月曜日。

学園生活の初めての土日も終わり、またも1週間の授業が始まった。

俺は朝4時に起き、準備をすると、寮に行き、フランクとセドリックと共に登校する。

そして、教室に入り、いつものように一番後ろの席に座ると、授業が始まる前に3人でくだらない雑談をしていた。

すると、教室にユイカが入ってくる。

ユイカは教室を見渡すと、まっすぐ俺達のところにやってきて、前の席に座った。

「ノエルは何とかなった。私は病み上がりで錯乱していたということで……」

ユイカが振り向いて、昨日の顛末を教えてくれた。

「無理ないか?」

「そもそもその報告は別にいらん」

「僕らを巻き込まないでくれる?」

確かに理由がおっぱい触っただから男子が触れてはいけない話題だ。

「ふむ……」

ユイカが首をちょっと傾げながら俺のことをじーっと見てくる。

「何だ? 金なら貸さんぞ」

「ちょっといいかな?」

ユイカは立ち上がると、俺の制服をぐいぐいと引っ張ってきた。

「マジで何だよ」

「ちょっと」

仕方がないので立ち上がると、ユイカが俺を引っ張って教室の隅に向かって歩いていく。

そして、教室の隅まで来ると、顔を近づけながら教室を見渡した。

フランクとセドリックはもちろん、前の席の方にいたイルメラ、ノエルも俺達を見ている。

さらには怪訝そうな顔をしているトウコとも目が合った。

「……マジで何?」

内緒話かなと思って、声量を落として聞く。

「……ねえ、トウコとどういう関係?」

ユイカも声量を落として、聞いてきた。

「なんで?」

「同じ顔じゃん」

言われたくないことを……

「他人の空似では?」

「いや、そんなレベルじゃない。ついでに匂いが一緒」

絶対に言われたくないことを……

「俺は長瀬だから日本人。あいつはラ・フォルジュだからフランス人。全然違うな」

「人種や国を揶揄するのはタブーだから誰も言わないけど、トウコってどう見てもアジア系じゃん。というか、日本人」

まあ、そうだな。

とてもラ・フォルジュが姓とは思えない。

俺は財布から100円を取り出すと、ユイカに握らせる。

「双子だ。誰にも言うな」

さすがにここまで来ると誤魔化せない。

「言わないけど、なんで隠してるの?」

ユイカも財布を取り出すと、100円をしまう。

「双子って同い年だから同じ学年になるだろ? 友達も被ったりする。それはそれは弄られるんだ」

「そんなもん? あまりこの歳になっても弄らないと思うけど……」

「イルメラは笑う。我慢しようとして噴き出す」

あいつは良くも悪くも正直者だからな。

「まあ……」

「優秀な妹を持つ可哀想な兄貴の苦労を想像しろ。しかも、双子」

「むぅ……確かにツカサはバカだもんね。私の賢い薄目作戦に引っかかった」

自分で自分のことを賢いっていう奴は大抵バカだ。

「俺はバカじゃないが、そういうわけで黙っておくんだぞ」

「ノエルにも?」

ノエル……

あいつは大丈夫な気もするが……

「黙っとけ。どこから漏れるかわからん」

「わかった」

ユイカが頷くと、ジェニー先生が教室に入ってきた。

そして、教壇に立つと、怪訝そうな顔で俺とユイカを見てきたので席に戻った。

「皆さん、おはようございます。では、基礎学の授業を始めます」

先生がそう言うと、前の席のユイカが寝始めた。

「寝んのかい……」

呆れながらもノートを取らずに授業を聞いていく。

ノートは後で貸してくれる人がいるからだ。

そうやって真面目に聞いていると、なんとなくだが、先週よりかは先生の言っていることがわかる気がした。

シャルのおかげだと思う。

そのまま授業を聞いていったのだが、今日は実技の方はないようで昼までぶっ通しで授業が進んでいった。

そして、昼になると、授業が終わり、先生や生徒達が教室から出ていく。

「あー、終わった」

ユイカが起き上がって腕を伸ばす。

「お前、なんで寝てんだ?」

「先生の言ってる意味がわからないから」

「なんでこの学園に来たんだよ」

まさかこのセリフを俺が言うとは思わなかった。

「別にいいじゃん。おかげで空間魔法を覚えられたし」

まあ、それはわかるけども。

「ねえねえ、あんたら、仲良さそうだけど、いつ知り合ったの?」

前の席の方にいたイルメラがノエルと共にやってきて、聞いてくる。

「昨日、演習場で会った。腹パンされた」

俺がとんでもない男に聞こえるな。

「俺はお前に腕を切られたけどな」

「あー、戦ったんだね。どっちが勝った?」

イルメラが楽しそうな顔で聞いてくる。

前から思ってたけど、こいつはこいつで好戦的だ。

「俺」

「作戦面は私が勝った。試合に負けて勝負に勝ったってやつ」

こいつ、あのしょうもない薄目作戦でマウントを取ってくるな……

「こいつら、何を言ってるの?」

要領を得なかったのか、イルメラがフランクに聞く。

「わからん。でも、見てて吐きそうな掌底でユイカが沈んだのは確かだな」

「あれはひどい。息ができなくなる。イルメラも食らうといい」

「結構よ。私、あんたらみたいな常識のない狂人とは戦わないの」

狂人……

「常識がない……」

俺とユイカがちょっとへこむ。

「あ、あの、ユイカさんとツカサさんは授業前に何を話してたんです?」

空気を読んだノエルが話を変えてくれた。

でも、その話題のチョイスはやめてほしかった。

「ちょっとな……」

「えーっと、内緒?」

言ったらダメ。

「怪しい……なんかお金を渡してたわよね?」

イルメラがジト目になる。

「100円もらった」

「100円あげた」

「いや、なんでよ?」

え? なんで……?

「なんで?」

「さあ?」

「こいつらと同時に話していると頭が痛くなるわね……」

イルメラが頭を抱えた。

「色々あるのでは? 同じ日本出身ですし」

ノエルがフォローしてくれる。

「そうそう。ノエルは優しい」

「そんな優しいノエルを怒らせるなよ」

しかも、しょうもないこと。

「怒る? 何の話です?」

ノエルが笑顔で聞いてきた。

「いや、なんでもない」

怖っ。

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