The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 30



俺は寮の学食で弁当を食べ終えると、A棟に向かう。

すると、今日は約束の10分前に来たのにすでにシャルが掲示板の前で待っていた。

「早すぎない?」

シャルに近づき、声をかける。

「あまり寮にいたくないのよ。別に気にしなくていいわ」

「そっか。あのさ、月曜のことなんだけど……」

「それは明日、話しましょう。悪いけど、学園では話したくない」

それもそうだろうな。

「じゃあ、呪学の授業に集中しよう」

「素晴らしい心がけね」

「まあな」

全然、わかんないだけどな。

俺達はA棟に入ると、3階に上がり、教室に入った。

そして、一番後ろの席につくと、授業が始まるのを待つ。

「シャル、薬草学って受けてる?」

「受けてるわね。錬金術関係の授業だし」

あー、薬草ってポーションの材料らしいし、そうなるか。

「一応、聞くんだけど、面白い?」

「面白いわね」

「歴史は?」

「取ってるし、面白いと思うわよ」

なんとなくだが、俺よりトウコと気が合うんじゃねーかな?

「そっかー」

「受けないの?」

「歴史はこれの裏だから受けない。薬草学は考え中。退屈だったんでな」

「まあ、合う合わないがあるからね。解呪を覚えるのが目的ならそれに集中するのもありよ。多方面に手を広げても大変なだけだし」

そうするか。

シャルにアドバイスをもらっていると、先生がやってきたので呪学の授業を受ける。

やっぱり難しすぎてよくわからなかったが、先生の話を聞いていった。

そして、授業が終わると、頭の中には?マークがひしめいていた。

「シャル、わかった?」

「難しいわね……」

シャルでもそうか……

「ふう……まあ、始まったばかりか」

「そうね。あ、私、ちょっと校長先生に呼ばれているから先に帰ってちょうだい」

生徒会長だもんな。

「わかった。じゃあ、明日な」

「6時だからね。寝坊したら公園で延々と待つことになるから寝坊しないように」

いや、その時は帰りな。

「了解」

俺はシャルと別れると、校舎を出て、寮に向かう。

丘を登っていると、女子寮との分岐点で町並みを眺めながらぼーっとしている女子がいた。

「お前、何を黄昏てんだ?」

「お兄ちゃんか……」

トウコはチラッと俺を見たが、すぐに町並みを眺めだす。

「何か見えるかー?」

「学園では話しかけないでよ」

「誰もいねーじゃん」

周りに他の生徒はいない。

「まあ、そうだね……お兄ちゃんは呪学?」

「そうだな」

「ノエルに聞いたんだけど、本当だったんだ……なんでまた呪学?」

「母さんが解呪を得意って聞いてな。じゃあ、俺も才能があるのかと思って」

双子の妹にも本当のことを言うわけにはいかない。

「バカだなー。んなもんあるわけないじゃん」

俺もそう思う。

「ほっとけ。お前は歴史か?」

「そうだね。知らないことを知るのは楽しいから」

優等生のセリフだなー。

バカのくせに。

「お前、町に行ったことある?」

町並みを眺めながら聞く。

「何回かあるね。イルメラ達と行った。すごいよね」

「だなー。町の外は?」

「それはないね。お母さんが反対するだろうし」

するかもなー。

「すげー気になるんだよな。魔物だぜ?」

「だねー。お兄ちゃん、トライデントを欲しがったってマジ? バカじゃない?」

女には男の夢がわからないようだ。

「うるさいわ」

トウコの頭を叩く。

「DVだ……ハァ、帰ろ」

「俺も帰るわ。じゃあな」

「すごいセリフだねー。帰るところは一緒なのに」

「まあなー」

俺達は別れると、それぞれ男子寮と女子寮に戻る。

そして、家に帰ると、この日は寝坊しないように早めに寝て、翌日に備えた。

翌日、朝早くに起き、公園に行くと、シャルに武術を教えていく。

「ねえ、なんで私の攻撃が全部見切られるの?」

先程、軽く模擬戦をしたのだが、シャルの攻撃は全部、流した。

結果、シャルはすぐに体力が尽きてしまい、膝を抱えて、休んでいる。

「いや、そりゃ俺が教えたものだからな」

シャルはそれ以前だけど……

「魔法を使っても勝てない気がする……」

どうかねー?

俺は魔法を使ってくる相手と戦ったことないからわからない。

「どうする? まだやるか?」

「うーん、模擬戦よりもう一回、動きを見つめ直した方が良い気がする」

真面目だなー。

「じゃあ、もうちょっとやろうか」

「お願い」

その後、シャルに武術の基礎となる動きを教えていくと、時刻が7時となり、公園には犬の散歩をする人やランニングする人がちらほらと見えだした。

「疲れた……」

シャルはまたもや膝を抱えて休んでいた。

「大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと疲れただけだし」

シャルはそう言うと、立ち上がろうとしたので手を差し出す。

シャルはその手をじーっと見ていたが、手を握り、起き上がった。

「ありがと」

「いーえ。真面目にやるのは結構だが、ケガだけはするなよ」

「しそうにないわね。あなたが支えてくれるから」

倒す時は必ず支えている。

だって、受け身すらできないんだもん。

いや……

「受け身を教えるべきかねー?」

よく考えると最初に教えるのは受け身な気がする。

「教えてよ」

「じゃあ、まあ……そんなに難しいことじゃないし」

俺はその後、受け身の取り方を教えていく。

受け身自体はそんなに難しいものじゃないのですぐだ。

「これならできそう」

「とっさにできるようにしろよ」

本当は何回も投げて体に染みつかせる必要がある。

だが、それは俺が嫌だ。

芝生とはいえ、やりにくい。

「家で練習するか……」

シャルの家って広そうだもんな。

俺の部屋は受け身を練習できる広さもない。

「そろそろ帰ろうぜ。人も増えてきた」

たまに人が通っていくが、皆、俺達をチラチラ見ていた。

まあ、逆の立場なら俺も見ると思うので仕方がない。

「それもそうね。はい、これあげる」

シャルは青いポーションを2つ取り出し、1つを俺にくれた。

「どうも……あのさ、町に行った時に魔法屋でポーションを見たけど、青いのって10万もしたぞ……これいくら?」

気にせずにポーションを飲んでいるシャルに聞いてみる。

「あー、町に行くって言ってたものね。安い粗悪品は工場生産のやつで安いけど、ちゃんとしたポーションは作れる人が限られているから高いのよ。まあ、いくらって言われてもそれは私が改良したやつだから知らない」

味がリンゴだもんなー。

「すげー飲みづらい。10万って」

「なんでよ。飲みなさいよ。せっかく今度はイチゴ味を作ったのに」

そう言われたので飲んでみると、確かにイチゴ味がした。

味変してる……

「美味しいな」

「でしょー。今、ぶどう味を開発中」

本当に趣味なんだな。

「コーラ味にしてくれ」

「コーラ? 炭酸か……」

シャルが腕を組んで悩みだした。

「無理ならいいや」

「無理? ふっ、作りましょう」

挑発したつもりはないのに挑発と受け取られた……

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