Chapter 10
俺達は丘を降りると、D棟に入る。
校舎の中は洋風の雰囲気であり、かなり綺麗だ。
俺がこの前まで通っていた中学とは程遠い。
「この建物って新しいのか?」
新築ではないだろうが……
「昨年、校舎の建て替えがあったんだ。魔法学園はOBやOGが多いから寄付金も多いんだよ」
セドリックが教えてくれる。
「へー……」
ウチも寄付してんのかね?
ラ・フォルジュはしてそうだな。
俺を裏口入学させることができるくらいだし。
「教室はそこだ」
フランクが目の前の扉を指差した。
「よっしゃ行くか」
俺は歩いていき、扉を開ける。
しかし、教室内には10人程度しかいなかった。
内1人は一番前の席というあり得ない位置に座り、頬杖をついている我が妹だ。
トウコはチラッと俺を見ると、すぐに興味なさそうな感じで前を見た。
「セドリック、フランク、後ろな」
「いいけどさ」
「勉強する気なくて笑うな」
俺はトウコ以外のクラスメイトを眺めながら後ろの席を目指す。
そして、一番後ろの席につくと、セドリックとフランクも隣に並んで座った。
「なあ、少なくね? 30人くらいって聞いているんだけど……」
俺らをいれても10人ちょっとしかいないよ?
「基礎学だからなー……しかも、朝一」
「Dクラスは28名いて、内10名は僕らと違い、就職した大人だね。そういう人達はまず基礎学なんて履修済み」
そうなんか……
「お前らは? 基礎学いるん?」
「いるよ。一番大事だからね」
「当然だな」
こいつら、もしかして優等生では?
……ん?
俺が2人に感心していると、前の方に座っていた女子2人が俺達のところに歩いてきてた。
一人は気の強そうな目をしている赤髪の女子でもう一人は優しそうな雰囲気をしている。
当然、2人共、制服を纏っていた。
「ねえ、フランク。そいつ、誰?」
赤髪の方がフランクに聞く。
「おはようくらい言えよ」
「おはよう。で?」
ヤンキーかな?
「新入生。今日からだと」
「ふーん……」
赤髪の女がまじまじと見てきた。
「どうもー」
挨拶をしてみる。
「どうも……なんかバカそうね」
失礼な。
「正解」
「お前、人を見る目があるな」
セドリックとフランクが感心する。
「こら。失礼だぞ」
「イングランドの首都を知っているかい?」
セドリックが笑いながら聞いてくる。
「知らん」
「ほらー」
「俺がバカかどうかの事実はどうでもいいんだよ。俺がお前にいけ好かないキザ野郎って言ったら怒るだろ」
「いや、さっき聞いたよ……」
そうだっけ?
「あんたら、もう仲良くなったの?」
「俺、フレンドリーだから」
人類、皆兄弟。
「ふーん……私はイルメラよ。イルメラ・ヘンゼルト」
「あ、私はノエルです。ノエル・アントワーヌ」
赤髪の女と茶髪の女が自己紹介してくる。
「どうも。俺は長瀬ツカサ。長瀬が姓ね」
「もしかして、ユイカと同じ日本人?」
「そのユイカを見たことないけど、そうらしい」
この教室には俺とトウコ以外に日本人らしき人はいない。
「へー……同郷は大事にしなさいよ」
また言われた。
「魔法使いはそんなルールみたいなことがあるのか? 昨日、フランクにも言われたけど……」
「普通じゃない? 私はそこのフランクと一緒でドイツ出身だけど、やっぱり気にかけるしね。まあ、同じ国でも仲良くない人達もいるけど……」
イルメラはそう言うと、ノエルの方を見る。
すると、ノエルが困ったような顔になった。
「別に私達だってそんな仲が悪いってことはないですよ」
達?
誰だろう?
「ノエルはどこ出身なの?」
「私ですか? フランスです」
また半分、同郷だ。
あれ? また?
「えーっと、誰と仲が悪いの?」
「生徒会長」
「イルメラ! そんなことないから!」
イルメラが断言すると、ノエルが慌てて止める。
「へー……」
えー……
シャルってそんなに問題児なの?
まったくそんなこと思わなかったぞ。
「まあ、家とか色々あるからね。日本の魔法使いの家はまったく知らないけど、あんたも気を付けなさい」
気を付けよー。
一応、ラ・フォルジュの人間でもあるし。
「それで同郷のユイカとやらは?」
見当たりませんが?
「寝てる」
「起こしたんですけどねー……なんか気分が優れないって言ってました」
2人が困った顔になった。
そっちの方が問題児のような気がするけど、大丈夫かね?
その後、少し話すと、女子2人は前の席の方に戻っていった。
「イルメラと同郷なん?」
2人が去ったのでちょっと声のトーンを落としてフランクに聞く。
「まあな。あいつは物事をはっきり言うタイプだけど、面倒見もいいんだ。悪く思うな」
やはり同郷を大事にしろという言葉は本当のようでフランクがフォローした。
「別に気にせん。もう一人はすごかったな」
「何がとは言わんが、言いたいことはわかる」
ノエルは全体的にすらっとしてたが、胸だけは大きかった。
昨日、スタイル良いなって思ったシャルよりも大きい。
西洋人、すげーって思った。
「しかし、生徒会長ってそんなに問題児なのか?」
「別に問題児ってわけじゃねーよ。むしろ優等生だな」
「生徒会長になれるくらいだからねー」
まあ、それもそうか。
「ノエルと仲が悪いのか?」
「生徒会長の家は名門中の名門で生徒会長はその後継ぎなんだよ。そのせいかプライドの塊だな。そら他とぶつかる」
プライドねー。
ドジっ子にしか見えんかったが……
「ふーん……」
「まあ、他所のクラスさ。ただウチのクラスにも似たようなのがいる」
似たようなの?
「いんの?」
そう聞くと、フランクが顔を寄せてくる。
「……一番前に座っている黒髪の女子がいるだろう?」
いるね。
頬杖をついている子。
俺と同じ生年月日の子。
「あれ?」
「指差すな……あれが同じくフランスの名門中の名門ラ・フォルジュの御令嬢だ。生徒会長のライバルで昨日言った氷姫だな」
ふっ……
「ふふ、ふふふっ……」
堪えきれずに笑ってしまうと、前の方にいる生徒達が俺を見てくる。
しかし、すぐに興味をなくして、前を向いた。
「いや、笑うなよ」
「そんなに可笑しかった?」
2人が呆れている。
「悪い……ちょっとな」
あいつ、氷姫だってー!
ちょーウケる!
帰ったらからかってやろー!
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!