The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 9



翌日、俺は母親に起こされ、リビングでトウコと朝食を食べていた。

「まだ暗いじゃん……」

4時って朝じゃなくて夜だろ。

「仕方がないよ。そのうち慣れるって」

トウコもうんざりした顔でパンを食べている。

慣れてきたところにゴールデンウィークだったから五月病にかかっているのだろう。

「お前、もう着替えたん?」

トウコはすでに制服を着ている。

昨日のシャルが来ていたのと同じ白い制服だ。

だが、昨日のシャルと違って、自分と同じ顔の妹が着ていてもまったく惹かれない。

「私は早く先に行くからね。いい? 私達は他人ね。ただのクラスメイト」

反抗期みたいな発言だな。

まあ、俺も同感なんだけど。

「わかったよ。ラ・フォルジュさん」

「はい、長瀬君」

「「うわっ、違和感がすごいなー。自分の苗字じゃん」」

声を揃えると、お互いがお互いを睨む。

「いいから早く食べなさい。それとツカサは初日なんだから寝ぐせをどうにかしてから行くように」

母さんがキッチンから苦言を呈してきたのでさっさと朝食を食べると、洗面台に行き、寝ぐせを直した。

そして、自室に戻り、制服に着替える。

「よし、行くか……」

そうつぶやくと同時にノックの音が聞こえてきた。

「なーにー? もう出るよー」

扉に向かって答えると、扉が開き、父さんと母さんが入ってくる。

「ツカサ、お弁当」

母さんがそう言って弁当を渡してきた。

「午前中で終わると思うけど?」

授業は12時に終わるけど、こっちは朝の9時だ。

「どうせ遊んで帰るでしょ」

あー……まあ、そうなるかも。

「勉強も頑張るよ」

そう答えながら弁当をカバンにしまう。

「ツカサ、無理をしない程度に頑張れよ」

父さんが助言をしてきた。

「いや、それどころじゃないんだけど……」

腕がなくなるだろ。

「お前の魔力から考えてもすぐに魔力がなくなるとは考えづらい。それにラ・フォルジュのお婆ちゃんが魔力を回復するポーションを大量に送ってくれるらしいから数ヶ月で魔力が尽きることはない。少なく見積もっても数年は大丈夫だ。だから無理をするな。お前の性格からいって無理をすると、すぐに投げだす」

まあ……

嫌いな勉強を投げ出した結果がニートだしな……

「投げ出すのは腕なんだけどな! わはは!」

「「………………」」

今年一番のギャグだったんだけど、パパとママはつまらなかったらしい……

「魔法か……適度に頑張ってみるよ」

仕切り直し。

「ああ……それとこれを渡しておく」

父さんがそう言って1枚の黒いカードを渡してくる。

「何これ?」

「どうせ案内を読んでないんだろうから説明すると、アストラルは世界中の人が集まってくるから通貨がバラバラだ。だからアストラル内では通貨をマナというのに統一している」

「円は使えないの?」

800円しか持ってないけど……

「使えない。だからそのカードだ。最近はアストラルもキャッシュレスになっていてね。物はそれで買えばいい」

「いくら入ってんの?」

「俺と母さんから入学祝で2万マナ。ラ・フォルジュのお婆ちゃんから3万マナ。あと知らない間に5万マナ入っていたが、フランスの口座からだったし、多分、ラ・フォルジュのお爺ちゃんだろう。大事に使いなさい」

ありがたいんだが、物価がわからないから多いのか少ないのかわからんな。

あと、人に変な腕輪を着けたんだから長瀬の爺ちゃんも寄こせよ。

まあ、話も聞かずに着けたのが俺なんだけど……

「ありがとー。ラ・フォルジュの家には夜にでも電話しておくよ」

「そうしなさい」

「じゃあ、行ってくるわ」

そう言って、扉の鍵を開けて、寮の部屋に入る。

部屋はまだ荷物を入れていないので少し寂しい。

「今度の土日に模様替えでもするか……」

そうつぶやき、寮の部屋を出る。

すると、昨日とは違い、何人かの男子が廊下を歩いていた。

もちろん制服を着ているし、魔法学園に通う生徒だろう。

俺はとりあえず、正面のセドリックの部屋をノックする。

「おーい! 起きろー」

「起きてるよ」

「こっちだ、こっち」

横から声が聞こえたと思ったら昨日の休憩スペースに制服を着たセドリックとフランクが座っていた。

「そっちかい」

そう言いながら休憩スペースに近づく。

「ここで待つって言っただろ。それにしてもちゃんと起きられたようだな」

フランクが笑った。

「起きたよ。でも、日本は朝の4時だぜ? 時差とか聞いてねーし、ふざけんな」

「なんで知らないんだよ……」

「君、もしかしなくてもアストラルのことを何も知らないの?」

2人が呆れる。

「知らんな。まあ、そのうち慣れるだろ。それよりも学校に行こうぜ。初日から遅刻はないわ」

「そりゃそうだ」

「行こうか」

2人が立ち上がったので階段を降り、玄関まで行く。

そして、今日はちゃんと靴を持ってきたので靴を履くと、寮を出て、丘から降りていった。

すると、男子生徒だけでなく、女子生徒の姿も見えだし、本当に学校の通学風景のようだった。

「懐かしいなー。2ヶ月前まで毎日見ていた光景だ」

まあ、当時の光景はほぼ黒髪だったから微妙に違うがな。

外国の人が多いからカラフルだ。

「ニートだもんな」

「親御さん、泣いてるんじゃないかい?」

「母さんは泣いてたな。わはは」

昨日の夜、抱きしめられて『あなたはやればできる子だから』って言ってた。

「笑えねーなー……」

「勉強についていけなくなっても教えてあげるから不登校にはなるんじゃないよ?」

ギャグのセンスがないようだ。

「お前、いけ好かないキザ野郎のくせに良い奴だな。テスト前にノート借りるわ」

「ノートくらい自分で取りな、バカ」

字が汚くて読めないんだよ。

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