The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 14



俺達は昼になったので1階に降り、食堂で昼食を食べた。

といっても、俺は弁当持参だったのでそれを食べる。

午後からは2階の休憩スペースで駄弁り、3時くらいになると、帰宅した。

「本当にまだ昼の12時だな……」

自分の部屋にある掛け時計を見ると、長針も短針もてっぺんを指していた。

「夜まで腹が持つかねー?」

部屋を出ると、隣の部屋の前までやってくる。

そして、扉をノックした。

『なーにー?』

中から妹の声が聞こえる。

「トウコ、ちょっといいか?」

『んー』

適当だが、許可は得たので扉を開けて、部屋に入ると、相変わらずのぬいぐるみだらけの部屋だった。

トウコはそんな部屋の端にあるベッドで寝ころびながら雑誌を読んでいた。

「もう着替えたんか?」

「とっくの前に帰っているからね。お兄ちゃんが遅いだけでしょ」

確かにフランクとセドリックと長々と駄弁っていたが……

「お前さ、友達いないの?」

「んー? いるよ。休日に遊びに行くし」

「いや、あっちの学園の友達。まったく話しているところを見てないし、あんな前に座るか?」

先生の正面だった。

しかも、隣には誰もいない。

「あー……いや、話す人もいるよ。それこそお兄ちゃんが今日話していたイルメラやノエル、それにユイカかな。この辺は同じクラスで年が近いからね」

「話してなくね?」

「寮では普通に話すよ。ただ普段はあまりしゃべらないようにしてる」

「なんで?」

トウコは基本的におしゃべりなはずだ。

「私、ラ・フォルジュを名乗ってるもん。しゃべったら品がないことがバレるじゃん。ぼろが出るじゃん」

確かに品性はない……

今だって、だらしない格好で雑誌を読んでいるし、なんならパンツが見えている。

「うーん、名門の品かー」

「そうそう。んなもんあるわけないじゃん。食事中に屁をこくアホの妹だよ?」

お前はトイレの電気を点けっぱなしにして、母親によく怒られるアホだもんな。

「イジメとかじゃないなら良かったわ」

「んなわけないじゃん」

「いや、プライドの塊とか聞いたからさ」

「プライド(笑)」

トウコがこちらを向くと、片肘を突きながら笑う。

うーん、そんなものなさそうだ。

「なあ、お前って氷魔法が得意なんか?」

そう聞くと、トウコの顔がこわばった。

「……なんで?」

「今日の授業の氷魔法がすごかったし」

「まあね……どちらかというと、そっちの方が得意」

ふむふむ。

「あだ名を考えてやろうか?」

「知ったな!? 知ってはいけないことを知ったな!」

トウコが枕を投げてきたので普通にキャッチする。

「どうしたんだよ? 品がないぞ、氷姫……ふっ、ふふふ」

「笑うな!」

「だっさいな」

「知ってるよ! 私だって、ださいあだ名の人がいるんだなーって思ったもん! まさか自分とは……」

ウケる。

「なあ、お前、空間魔法とか使えるか?」

「使えるよ。はい、これ。お母さんに渡しておいて」

トウコはそう言ってどこからともなく弁当箱を取り出してきたので受け取り、枕を返す。

「お前、教本の術式を全部、覚えているか?」

「必死こいて覚えた。私も魔法使いなろうと思ったのは中二の夏で遅いからね」

そうなんか……

「コツない?」

「寝る前と朝起きた時に復習」

あ、はい……

「これから大変だなー」

「普通の高校もそうじゃないの? 大学受験もないし、楽な方だと思うけど……」

大学受験か……

確かにそっちの方が辛そうだ。

「頑張るか……」

「そうしな。あ、ポテチ取ってー」

勉強机に置いてあるポテチを取ると、寝ているトウコの顔面に向かって落とす。

「あんがとー。がんばー」

トウコはポテチを受け取ると、雑誌を読みながらポテチを食べだしたので部屋を出た。

「こらー、扉を閉めてけー」

うるさいので引き返して扉を閉めると、1階に降り、リビングに向かう。

すると、母さんがお茶を飲みながら昼のワイドショーを見ていた。

「ただいま。これ、弁当箱ね」

「おかえりなさい。あら? トウコの分も?」

「さっきトウコと話してた。母さんさ、寮にも学食があるじゃん。しかも、無料」

フランクとセドリックは普通に食べてた。

「あなたもトウコも好き嫌いが多いから栄養が偏るでしょ」

まあ……

「うーん……何とも言えない」

「あなた達の親を16年もしている私が言うからそうです」

「そっかー。まあいいや。俺、ちょっと走ってくるから帰ったら摘まめるもんを用意しておいて。夜までもたんわ」

「勝手にカップラーメンでも食べなさい」

栄養は?

いや、まあ、別に気にしないけども……

俺はテレビにくぎつけの母親に呆れながらも2つの弁当箱をテーブルに置き、自室に戻った。

そして、運動着に着替えると、日課としているランニングに向かう。

ランニングは趣味なのでほぼ毎日のようにしているが、この3ヶ月で一番気持ちが良かった。

まあ、これまではコソコソと夜中に走っていたので仕方がない面もある。

俺はいつものコースを走り、公園までやってくると、引き返した。

そして、リビングで母親とテレビを見ながらカップラーメンを食べると、自室に戻り、教本を眺めながら術式を覚えていく。

「うん……少しずつやろう……父さんも無理をするなって言ってたし」

教本を閉じると、ベッドに寝ころんだ。

そして、夕方になり、夕食の時間になったのでリビングに降り、家族4人で夕食を食べだす。

「ツカサ、初日はどうだった?」

父さんが聞いてきた。

「氷姫が先生を泣かしてた」

「氷姫言うな。オートマタを壊してたのはお兄ちゃんも一緒でしょ」

トウコがぷんすかと怒る。

「勉強の方は大丈夫そうか?」

「……頑張る。フランクとセドリックに教えてもらったし」

「そうか……無理をするなよ」

どうすっかねー?

無理をしたくないというかできそうにないが、腕がなくなるのも嫌だしなー。

まあ、始まったばかりか……

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