The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 21



シャルから空間魔法を教えてもらった翌日の日曜日。

この日も早めに起きた俺は空間魔法で物の出し入れをして遊んでいた。

そして、午後になったので制服に着替え、アストラルの寮に行く。

すると、いつもの休憩スペースにフランクとセドリックがソファーに座っていた。

「おいーす。実家はどうだった?」

俺もソファーに座りながら2人に聞く。

「いつも通りだよ。語ることはないね」

「俺は眠い」

時差がなー……

シャルが言っていた通り、結構深刻だな。

「頑張れー」

「んー? なんかご機嫌だね?」

「良いことでもあったか?」

2人が聞いてきたのでポケットからスマホを取り出す。

「お客さん、これが何に見えます?」

「スマホ」

「誰が客だ、誰が」

お前ら。

「このスマホにご注目あれ。あーっという間に……消えましたー!」

そう言うと、スマホが消えた。

もちろん、空間魔法を使い、スマホを収納したのだ。

「おー! 空間魔法か。覚えたんだね」

「一生無理と思っていたが、すげーな! どんな裏技を使ったんだ?」

そうそう! 褒めたまえ!

……いや、褒めてるか?

「とある美人魔法使いに教えてもらった」

「へー、良かったね」

「最高じゃねーか」

うんうん。

「そういうわけで空間魔法を覚えた。なんか魔法使いの第一歩を踏みしめている感じだ」

「わかる、わかる」

「懐かしいなー。俺もそう思ったことを覚えている」

やはり皆、そう感じるか。

「よし、お前らにジュースを奢ってやろう。町に行くぞ、野郎共」

「それは嬉しいね」

「行くか」

俺達は立ち上がると、寮を出た。

そして、丘の上から町並みを見渡す。

「さっき言った美人から聞いたんだけど、行くなら商業区か?」

町並みを見渡しながら聞く。

「そうだね。他はあまり見どころがない」

「住居区や工業区に行っても迷惑だろうしな」

確かに……

制服を着ているとはいえ、不審者だ。

「歩き? 電車?」

「あー、そこから知らないのか」

「お前、本当に予習しねーな」

教えてくれる人がいるんだからしねーよ。

「地図はもらったけどな」

「じゃあ、はぐれても迷子にはならんな。とりあえず、こっちだ」

フランクとセドリックが丘を降りていったのでついていく。

そして、丘を降り、校舎を通り過ぎると、とある建物に入っていった。

「何だ、ここ?」

建物の中は学園の教室くらいの広さがあるが、誰もいない。

というか物もない。

「まずなんだがな、アストラルは地球とは別のものが発展している」

フランクが振り向いて説明を始めた。

「魔法か?」

「そうだ。だからこの世界には車がない」

「ないの?」

不便じゃね?

「ああ。まあ、自転車なんかは持ち込んでいる奴がいるからあるが、基本的に車やバイクなんかの燃料を必要とするものはない」

「列車はあるけどね。魔導列車」

さりげにセドリックがすげーことを言っている。

「魔導列車って何だよ?」

「魔力で動く列車。別の町に行くのに使うね」

「え? 別の町があるの?」

「そりゃあるよ。まあ、この説明は後でいいでしょ」

すげー気になるんだが?

「俺、全然知らんな……」

「俺もお前が知らなすぎて驚いてるよ。まあ、セドリックが言うように別の町は後でいいだろ。一度に多くのことを説明しても理解できないだろうし」

うん。

「だなー。車がないのはわかったが、移動はどうしてんだ? この町って結構広いんだろ? 不便じゃん」

シャルがパリくらいの広さって言ってた。

「ああ。それでこの建物に繋がるんだ。あそこを見てみろ。床に魔法陣が描いてあるだろ」

フランクがそう言って指差した床には確かに魔法陣らしきものが描かれていた。

「何あれ?」

「あれは転移の魔法陣だ。つまりこの町は遠くに行く時、あの転移魔法陣を使う」

「はえー……本当に違う世界だな。ファンタジーじゃん」

「異世界だし、ファンタジーなんだよ」

「この技術を地球に持ち込めよ。金持ちになれるぞ」

「……それは禁止されていることだな。歴史の授業をしてやろうか?」

歴史……

呪学を受けるために俺がサボった授業だ。

「いらん。興味ないわ」

「だろうな。まあ、とにかく、こっちの世界の技術をあっちの世界に持ち込むの禁止されているってことを覚えておけばいい」

「あっちの世界で空間魔法を使ったけど?」

シャルも使ってたし、何ならポーションをくれた。

「その程度なら問題ねーよ。もし、見られても手品で通せる」

まあ、確かに……

俺も手品だなって思ってハンドパワーって言ったし。

「じゃあいいか。つまり魔法陣で商業区に行けるわけ?」

「ああ。他の場所にも行ける。まあ、乗ってみろ」

そう言われたので魔法陣の近くに行き、よく見てみる。

「一個しかないん? どうやって使うんだ?」

「それに乗って、商業区に行きたいって思うだけでいい」

「さっき言ってた他所の町に行きたいって思ったらどうなるんだ?」

「魔法が発動しないだけ」

そりゃそうか。

「これ、大丈夫か? ちょっと怖いぞ」

「大丈夫だよ。事故なんて起きたことない」

「お前、先に行けよ」

「脳筋のくせに情けない奴だなー……」

フランクは呆れながらも魔法陣に乗る。

「ほら、発動しないだろ? 魔法陣に乗って、行きたいところを想像したら――」

しゃべっている途中なのにフランクが消えた。

「説明しながら想像したね。あんな感じで移動できる。ツカサもやってみてごらんよ」

セドリックが笑いながら勧めてきたので魔法陣に乗ってみる。

「俺、商業区を知らんのだけど、発動す――」

セドリックを見ながらしゃべっている途中だったが、視界が真っ白になり、いつの間にかセドリックがフランクに変わっていた。

「あれ?」

「おー、来たか。ここが商業区だぞ」

どうやら発動したらしい。

「わけわからんな」

そう言いながらフランクに近づく。

「俺だって理屈はわかんねーよ。お偉いさんが作ったんだろ」

まあ、わからんわな。

俺も車や電車の仕組みを知らんし。

「おー、ちゃんと来てたね。ツカサのことだから住居区や工業区に飛んだかと思った」

セドリックも転移でやってきた。

「それはちょっと考えたけど、怖くてやめた」

「そうかい。じゃあ、出ようか。外はもう商業区だよ」

「何か買おー」

俺達は建物を出ることにした。

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