The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 22



転移の魔法陣がある建物を出ると、多くの人が歩いている街並みが見えた。

建物はヨーロッパ風であり、日本の家屋のような建物や高いビルはない。

「へー……綺麗だし、異国だなー」

「日本人は特にそう思うかもしれんな」

「ヨーロッパ風の街並みだからね。ちょっと古いけど……」

写真撮っていいもんかね?

「商業区ってことは店がいっぱいあるのか?」

「そうだな。生活用品から魔道具なんかも売ってるし、食いもん屋もあるし、バーなんかの飲み屋もあるぞ」

「さすがに飲み屋は行けないけどね」

そら、無理だわな。

俺ら、制服だし。

「どこ行くん?」

「お前が好きそうなのは魔道具を売ってる店だろうな。そういうデパートみたいなところがあるから行ってみるか……」

「そういえば、君、お金持ってる?」

セドリックが聞いてくる。

「金……父さんにもらったな」

そう言って、財布から黒いカードを取り出す。

「そう、それ。この町はキャッシュレスだから全部そのカードで支払う」

「マナだっけ? 何か聞いたな」

「いくら持ってんの?」

「えーっと、確か10万マナくらいもらった」

両親が2万、ラ・フォルジュの婆ちゃんが3万、爺ちゃんが5万くれた。

お礼の電話をしたら頑張りなさいって言われた。

「…………10万?」

「君の家、金持ち?」

2人が呆れた顔をする。

こいつらの呆れた顔も見慣れてきたわ。

「価値がわかんないんだけど、どんなもん?」

「1000マナで5ポンド……日本円だと、1000円くらいだね。あ、マナ=円と思っていいよ」

10万円かよ……

すげーな。

「親も爺ちゃん婆ちゃんもニート卒業が嬉しかったのかなー……」

「そうかもな……」

「お祝いだろうね……」

やっぱりか。

「大事に使おう」

「大丈夫かね?」

「さあ? とにかく行ってみようよ。すぐそこだし」

俺達は大通りを少し歩き、とある5階建ての建物に入る。

店の中は雑貨屋のようで至るとことに商品が並んでおり、制服姿の人やいかにも魔法使いっぽい服装をした人達が商品を見ていた。

「何ここ?」

「魔道具を売ってる店。一階は便利グッズだな。例えば、これ」

フランクが置時計を手に取る。

「時計だな。目覚まし時計か?」

「なんとこの時計で目覚ましをかけると、その時間に絶対に起きられるんだ」

「すげー! どういう仕組みだ?」

「寝ている人を起こす魔法がかかっているんだと」

マジかよ。

これで寝坊がなくなるじゃん。

「いくらだ?」

「30万マナ」

「バカか!」

ふざけんな。

どこの世界に目覚まし時計にそんな金をかけるバカがいるんだよ。

「いや、結構役に立つんだぞ。でもまあ、大人とかが買うな。あまり学生にはいらんか……」

「他におすすめはないの?」

「じゃあ、この置物」

今度はセドリックが変な銅像を手に取る。

「何だよ、それ」

「置いておくだけで部屋のホコリを自動で回収してくれる」

便利だとは思うが……

「いらん。母さんが掃除してくれる」

「実家住みか……じゃあ、単純にポーションとかは? 君、運動が好きそうだし、疲れとかが取れるよ」

ポーションはシャルがくれるしなー。

あ、でも、普通のポーションの味が気になるな。

「いくら?」

「安いのだと1000マナかな? すごいのだと10万マナのやつもある」

シャルのはいくらだろう?

今度、聞いてみるか。

「1000マナのやつを買ってみよー」

買い物籠を手に取ると、セドリックが指差したポーションを籠に入れる。

「あれ? ポーションって青じゃないのか?」

手に取ったのはポーションは無色透明だ。

「青いのは高いやつだよ。10万マナのやつ。ほら、あそこ」

セドリックが指差した方向には確かに青いポーションが置いてあった。

「へー……」

え!?

あのポーション、そんなにするの!?

気軽に飲んじゃいましたけど!?

「錬金術師として働けば儲かるんじゃないかな……?」

そっちの方が良くないか?

一生安泰だろ。

「君、錬金術師になりたいの? 難しいし、君には向いてないと思うな」

「いや、俺じゃなくて……」

うーん、まあいいか。

「いや、悪い。他にないの? 金ならあるぞ」

10万もね。

「大事に使うんじゃないの?」

「想像通りだな……ツカサ、あのグミを食べると、水がコーラになるぞ」

「マジ? 買おー」

俺はその後もフランクとセドリックに紹介してもらいながら色々なものを籠に入れていく。

「もうやめたら? 買いすぎだよ」

「勧めた俺らが言うのもなんだが、金がなくなるぞ」

確かに……

「買ってくるわー」

俺は店の奥にある受付に行き、並ぶ。

そして、俺の番になったので会計を済ました。

総額は1万5000マナだった。

「買いすぎたな」

「まあ、最初だしね」

「気持ちはわかるが、次からは自制しろよ。じゃないとすぐになくなるぞ」

確かに……

「上はどうなってんだ?」

「上? 2階が武器屋で3階が杖を売ってる。4階と5階は防具屋だね。鎧とかローブとか……」

は?

「杖やローブはわからんでもないが、武器とか鎧って何だ?」

RPGじゃん。

「普通に売ってるよ。魔法は学問だけじゃないからね」

「売ってんの? 武器を? 日本じゃ捕まるぞ」

「ここ異世界だもん。僕は杖だけど、武器を持ってる人もいるよ。フランクだって持ってるよね?」

「え? マジ?」

フランクを見る。

「持ってるぞ。ここじゃ出せんが、剣とかハルバードとか持ってる」

ハルバードって……

「戦争でもすんの?」

「ウチは武家だからなー。戦争なんかせんが、子供の頃から修練は積んでいる。それに武器を使えるとバイトで儲けられるぞ」

バ、バイト?

「バイトって?」

ヤバい匂いがするぞ?

「あー、外のことを知らんのか……」

「外?」

「町の外には魔物がいるんだよ」

ここ、マジで異世界だな……

俺、ゲームの世界に入ったんだろうか?

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