The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 8



フランクとセドリックと軽く話した後、家に戻った。

そして、制服を着て、一階に降りると、リビングにいた両親とトウコに見せてみる。

「どう? 似合う」

「ええ。似合いますよ」

「うんうん」

母さんも父さんも笑顔だ。

母さんに至っては指で涙をぬぐっている。

「全然、似合ってなくない?」

うるせー妹だ。

空気を読め!

不出来なニートが明日から学校に通うんだぞ!

「まあいいや。これで明日からニート卒業だわ。母さん、起きられる自信がないから起こして」

「わかってますよ。あなたが4時に起きられるとは思いませんし」

ん?

「4時って? 授業は8時からだから7時でいいよ?」

「時差があるでしょ」

はい?

時差?

「何それ?」

「あなた、渡した案内は読みました?」

なんかもらった気がするけど、読むわけねーじゃん。

文字は頭痛を引き起こすんだよ。

「読んでないけど、時差って何?」

「ハァ……アストラルと日本では3時間の時差があります。向こうの方が3時間早いんですよ。あなたがさっきここを出たのは昼の1時ですが、向こうは夕方の4時です」

マジか……

「なんで早いんだよ……遅い方が良かった」

だったら10時まで寝れたのに。

「実はアストラルの時間はアストラルを運営している機関が自由に動かせます。基本的にはヨーロッパ勢の権力が強いのでそうなっているのです」

へー……

「ん? ヨーロッパと日本の時差って8時間くらいだったよね? おかしくない? アストラルの朝8時が向こうの夜の9時じゃん」

俺は何度もラ・フォルジュの家に遊びに行っているので時差くらいは知っている。

「半数以上が会社勤めって言ったでしょう? そっちに合わせているんです。昼間は働き、夜は魔法の勉強です」

何だ、その生活……

「よーやるわ」

「それが魔法使いです。人生を捧げるのは当たり前です」

入学前から心が折れそうなんですけど……

「俺らと同じ歳くらいの奴らは?」

学生で昼夜逆転はきつくないか?

「そのための寮ですよ」

な、なるほど。

フランクとセドリックは遊ぶためって言ってたけど、それ以上な理由があったのか……

「俺も寮に住もうかな……」

7時まで寝たい……

「ダメです。あなたはウチから通いなさい」

過保護な親だ。

「マジか……」

「でも、お兄ちゃん、その分、授業が終わるのは早いよ」

確かに……

3時間早いわけだ。

明日は午前中だけだから12時まで授業がある予定だが、実際は9時までか。

すげーな。

「なるほどね。まあ、だったらいっか」

「早く寝なさいね」

母さんがジト目になった。

「わかってるよ」

「ツカサ、学園はどうだった?」

父さんが聞いてくる。

「いいんじゃねって感じ。知り合いというか、友達もできたし」

「え? 早くない?」

トウコが驚いた。

「いや、寮にいた奴らと話をしたんだよ。良い奴らだったなー。明日、クラスに連れていってくれるってさ」

「お兄ちゃん、友達を作るの早いね」

「そうか? まあ、男子は早いだろ」

知らんけど。

「誰? 一緒に行くってことはクラスメイトでしょ?」

「えーっと、苗字は忘れたが、フランクっていう太った奴とセドリックっていう優男」

「フランク・ヘーゲリヒとセドリック・シーガー…………どっちも名門ね……あれ?」

ん?

「どうした?」

「え? お兄ちゃん、Dクラスなの?」

「そうだな」

「うげー。一緒じゃん。最悪ー」

マジ?

普通、双子は同じクラスを避けんか?

「えー……お前もかよー」

やだー。

「絶対に兄妹って言わないでね。ましてや双子なのが嫌。よく見たら同じ顔ーって笑われるのはもう勘弁」

激しく同意。

その後に『似てないっ!』って声を揃えて更なる笑いが起こるまでがデフォだ。

「それはお婆ちゃんが計らってくれたんですよ。ツカサが早くクラスに馴染めるようにって…………余計なことだったようですけど」

余計だな。

「婆ちゃん、何してんの? 自分が友達いないからって一緒にするなよ。男なんて殴り合うか、一緒にバカするか、エロい話をすれば友達になれるんだよ」

妹と一緒のクラスとか嫌だわー。

しかも、双子。

「エロ…………と、とにかく、馴染めそうなら大丈夫です。ヘーゲリヒとシーガーならラ・フォルジュの家と特に交友関係があるわけではないですが、敵対もしていませんから問題ありません」

問題はそこではなくて授業だがな。

俺、魔法を使えないし。

腕を失いたくないから頑張るけど。

「敵対する家とかあんの?」

全然、知らん。

俺、何も知らんな……

「まあ、あなたには関係ありませんけど、ありますね」

「どこ? 一応、聞いておく。なるべく避けるわ」

「最大の敵対関係の家はイヴェールです。同じフランスの名門ですが、昔からのライバルで非常に仲が悪いです」

イヴェール?

どっかで聞いたことがあるような……

「学園にそのイヴェールとやらがいるの?」

「ええ、います。実家の力を使って1年で生徒会長になったシャルリーヌ・イヴェールですね」

あれー?

「あの人、マジで高飛車でプライドの塊だからね。お兄ちゃんも気を付けて。何を言われるかわかんないよ」

えー……

連絡先を交換しましたけど?

金曜に一緒に呪学の授業を受ける約束をしてますけど?

優しくてとても良い人でしたよ?

俺はどうなってんだと思いながらもラ・フォルジュの家の人間である母親と妹を交互に見る。

うーん……

「気を付けるわー」

…………親愛なる母と妹より美人で優しいシャルだな。

男はそんなものだし、俺は長瀬だからラ・フォルジュとは関係ないだろう。

うんうん。

「まあ、別のクラスだし、関わり合いはないと思うけどね」

「そうかもな。あ、家で思い出したけど、父さん、赤羽って知ってる?」

話題を変えよう。

「赤羽? あー、知ってるよ。確かお前と同じクラスに赤羽の子がいるな」

「ユイカでしょ」

トウコも知っているらしい。

友達かな?

「名前は知らんが、多分それ。フランクとセドリックが同じクラスに日本人がいるって言ってたんだよ。その子は大丈夫なん?」

「赤羽は問題ないよ。というか、長瀬は知名度もないし、仲が悪くなるほど関わり合いがある家がないな」

なんか寂しいな……

「何? お兄ちゃん、ユイカを狙ってるの?」

トウコがアホなことを言ってくる。

「顔も名前も知らん奴をなんで狙うんだよ。フランクの奴が同郷の繋がりを大事にしろって言ってたんだ。あと、お前らは気が合うってさ」

「気が合う? なんで?」

「バカだからだって」

失礼な2人だったわ。

「……まあ、ユイカもマイペースだからなー。というか、お兄ちゃん、もうバカがバレたの?」

「お前、イングランドってどこか知ってる?」

「あー……セドリック君のか……イギリスのことだよ」

いや、どこだよ?

場所がわかんねーから聞いているんだよ。

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